| 2003年12月3日(水) |
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江戸後期に活躍した浮世絵師、歌川広重(一七九七−一八五八年)の傑作「名所江戸百景」全百二十図を完全な形で復刻する事業が来春、完成する。一九九八年以来六年がかりの大事業だけに、関係者の感慨もひとしおだ。 ▽目玉事業で計画 浮世絵は江戸中期、彫師が彫った何枚もの版を使い、摺(すり)師が一色ごとに色を重ねて仕上げる多色刷りの技法が考案されて、急速に発展。その技術は北斎、広重のころに最高潮に達し、海外に渡った浮世絵はゴッホら印象派の画家にも大きな影響を与えた。 明治以降、機械印刷に押されて木版画は徐々に衰退する。戦後は後継者難とともに、版木や絵の具、和紙の入手が難しくなり、危機感を募らせた関係者が九二年、「東京伝統木版画工芸協会」を設立。技術の継承を進める中で“目玉事業“として独特の図柄、華麗な色彩で人気の高い百景の復刻が計画された。 「百景はありとあらゆる技法が駆使されている大作。そんな大それたことをやるので『ドンキホーテ』と呼ばれたものです」と同協会の本田正明事務局長(71)は言う。 一図ごとに彫師と摺師を指名、できるだけ初版に近い形で復刻する−を条件にスタート。初版の作品を精密に検討する過程で、今まで謎とされていた技法が判明したケースもあった。 ▽120の共同作業 「でも若い世代が力を付けたのが一番の収穫だった」と本田さん。中でも彫師の小池香世子さん(27)は、高校卒業後、この世界に入って九年目の最年少メンバーだ。 「何となく木を彫る仕事をしたかったけれど、木版の仕事はあまり知らなかった」。周囲に勧められて親方に入門、七年間の修業を終え、初の大仕事が百景の一つ「深川木場」。天井からつるした電球で手元を照らし、小さな彫刻刀で一ミリ以下の細かい部分を掘り進める、地味な作業が続いた。 「一カ月ぐらいかかった。百景だからすごく難しい、とは感じなかった」と小池さん。だがペアを組んだ摺師の伊藤達也さん(38)は「あれだけのものをきちんと彫ってくるんだから、すごいと思いますよ」と話す。 天空の一部分だけにぼかしを入れる「あてなしぼかし」など、特殊な技法を使い「深川木場」は完成。こうした共同作業が一図ごと百二十組行われるわけだから、確かに気の遠くなる事業だ。 完成した全百二十図は、来春、東京で開かれる展覧会で披露されるほか、フランス、イタリアなど海外でも展示される。 |